BLOG & INFO

おいしいごはんの冷まし方は?|炊き立てのおいしさと冷めたおいしさを考える

お弁当

炊き立てのごはんの高揚感は、やっぱり特別です。炊飯器や鍋の蓋をあけると湯気がふわっとして、湯気の向こうにキラキラとしたお米が見えたときの「おいしそう〜!」とわくわくする感じは、ほかの食べ物ではなかなか味わえないもののように思います。

でも、お弁当などの冷えたごはんにも、それにしかないおいしさがあります。冷や飯を食うなどの言葉もありますが、酢飯も、おにぎりも、「冷めること」でおいしくなる料理です。炊き立てが取り上げられやすいお米ですが、今日は「冷めたごはん」について考えてみました。

「炊き立て神話」と、冷めたごはんのおいしさ

炊き立ての白いごはんのつややかな様子は特別です。「銀シャリ」とはよく言ったもので、炊き立ての白いごはんを見ると、銀色に輝いていると言いたくなる気持ちもわかります。でも考えてみると、「炊き立て」と呼ばれる時間は、本当に限られています。炊き立てをしゃもじですくって、パクッと味見する。それは間違いなく炊き立てのおいしさですが、いざ器によそい、おかずを盛りつけ、さあ食べようという頃には、もう「炊き立て」から少し離れている気もします。

日本の昔の暮らしをふりかえってみると、日本では長いあいだ「炊き立て」がごはんのおいしさの象徴として語られてきたようです。そこには、白いごはんがハレの日の象徴であったことや、炊き立てのごはんを食べられることが当たり前ではなかったことが関係しているのかもしれません。料理研究家の土井善晴先生は、著書『おいしいもののまわり』の中で、炊き立てのごはんへの憧れについて述べています

そこでは、

p.103 ご飯を味わうなら、やや冷め加減のご飯やおにぎりのほうが、ご飯の甘みやご飯粒の弾力を味わうことができておいしい。

p.64 今のようにそれほど豊かではなかった頃、一部の人を除いては、炊き立てのご飯なんて長く食べられなかった

p.64 どうして温かいご飯を求めるのだろうかと考えた。それは日本人の温かい炊き立てのご飯へのあこがれ

といった、はっとするような指摘をしています。

さらに、かつての日本の生活を想像すると、火を起こすこと自体が大仕事だったのではないかと思います。薪、炭、労力、時間。ごはんを炊くには、たくさんのものが必要だったはずです。多くの家庭では、一日に何度も炊くのではなく、まとめてごはんを炊きお櫃(おひつ)に移しながら食べていた時代があるようです。

つまり日本人は長い時間、日常の暮らしの中で「冷めたごはん」と一緒に暮らしてきたのだと思います。おにぎり、お弁当、酢飯…日本の家庭料理には「冷めること」を前提に完成する料理がたくさんあります。そう考えると、冷めたごはんは「炊き立て」の代用品ではなく、日本の食文化の中で育ってきたごはんの楽しみ方のひとつなのではないか?と思うのです。

冷ごはんで変化する「でんぷん」の科学

では、ごはんが冷めるとき、科学的には何が起きているのでしょうか。

炊きたてのごはんのでんぷんは、熱と水によってやわらかくなった「糊化(こか)」という状態になっています。ところが、ごはんを冷ますと、糊化したでんぷんの一部が再び並び直し、「老化(retrogradation)」と呼ばれる状態になります。この変化によって、粘りが落ち着き、粒感が出て、少し硬くなります。冷めたごはん独特の味わいは、こうした変化と関係しているのです。

また、「日本調理科学会の研究発表では、冷却によって「レジスタントスターチ(難消化性でんぷん)」が増えることも報告されています。レジスタントスターチは、小腸で消化されにくく、大腸まで届くでんぷんのことです。このような違いからも、温かいごはんと冷めたごはんでは、さまざまな変化が起きていることがわかります。

冷ごはんがおいしくないのは、「冷めたから」ではない?

冷めたごはんが苦手、という人も多いと聞きます。冷めたごはんを思い返すとき、私は飯台の中でうちわで仰がれたちらしずしと、給食で青いプラスチック容器に山盛り入っていた白ごはんの、両方を思い浮かべました。どちらも冷めたごはんですが、何かが違うように思います。

白飯だいすき!な私にとってはどちらのごはんも大好物でしたが、給食の容器のはじっこに水分と共に残ってしまったご飯は独特の香りがして水分量が多くて、やはり炊き立てのおいしさと比べると違っていたように思います。冷めたごはんがおいしくないという場合には、ベタつく、ぱさつく、においがこもる、といったイメージがあるのではないかと思います。

つまり、冷めたごはんの問題は「冷めたこと」そのものより、蒸気や水分、保存方法によって起きていることが多いのではないでしょうか。蒸気がこもると、水滴、傷み、ベタつきにつながりやすく、食味の面でも、衛生面でも問題が出やすくなります。そこで私は、「冷ますこと」より、「蒸気をどう逃がすか」を気を付けるようになりました。わっぱ弁当などの余分な湿気を吸ってくれるものを使ったり、アルミ弁当などの熱を逃がしやすいものを使ったりしています。

冷めてもおいしいごはんの作り方

味のこと、衛生のこと、道具のこと、いろいろと思いをめぐらせながら、自分なりに「おいしい冷めたごはんの作り方」を考えてみました。

①【道具の力をかりる】木のアイテムを活用して、蒸気を逃がす

炊き立てのお米の水分調整には、どうやら木の製品との相性が良いようです。お米というものが、いかに自然由来のおいしさなのかを改めて感じます。とはいえ、「お櫃を使ってください」「わっぱ弁当デビューしてください」「飯台を買ってください」と言われても、それは少し大変です。

では、どうしたらよいのだろう。そう考えたときに、食を通してたくさんの人の心を癒し、おにぎりで命を救ったことでも知られる佐藤初女さんのおにぎりの結び方を思い出しました。佐藤初女さんは、炊き立てのごはんを、濡れ布巾でふいて湿らせた木のまな板の上で少し冷ましてから結びます。

おにぎりは、アツアツのうちに結ぶのがよい。でも、熱すぎても難しい。だからこそ、このひと手間があると、ごはんの熱がほどよく取れ、水分も木のまな板がほどよく受け止めてくれて、ちょうどよい状態になるのだと思います。

②【調味してみる】油をたらりと加える

お米の魅力は、油や塩を加えなくても、米そのもののおいしさを楽しめるところにあります。」とはいえ、お弁当を作るときに、私が時々重宝している方法があります。

炊き立てのごはんをボウルに入れ、こめ油など香りの少ない油を少しだけたらします。好みで塩や白ごまを加え、さっくりと混ぜます。さっくり混ぜる過程で、湯気とともにほどよく水分が飛びます。
さらに、油がごはんの表面になじむことで、全体的にもっちりとした仕上がりになります。

そこに塩気と白ごまがなじむと、冷めたときに本当においしいのです。これは、スープストックトーキョーのごまご飯が大好きな娘のために、試行錯誤しているうちにたどり着きました。「冷めたごはんをおいしくする」というより、「冷めたときにおいしくなるように、調理しておく」イメージです。

③【お米の品種にたよってみる】冷めてもおいしいお米を選ぶ

みなさんは、お米をいつもどんなふうに購入していますか。価格、産地、品種、味の好み、買いやすさ。お米を選ぶ基準はいろいろあります。以前見た「お米の購入で重視すること」に関する調査記事では、価格を重視する人が多いという結果が紹介されていました。

もちろん、毎日食べるものだからこそ、価格は大切です。でも、ごはんソムリエの資格を取得する過程でさまざまな品種を試してみて、「もっとみんなが、その日の気分によってお米の品種を使い分けるようになったら楽しいのになぁ」と思うようになりました。

お米とひとことで言っても、日本全国には本当にたくさんの品種があります。そしてそれぞれに、何年もの試行錯誤を経てたどり着いた魅力があります。常にお米の品種を数種類常備して、その日の気分や料理によって選んだり、ブレンドしたりすることがあったら、すごく楽しいのではないかと思います。

品種によっては、冷めてもおいしさが残りやすいものがあります。米のでんぷんは主に、アミロースとアミロペクチンで構成されています。一般に、アミロースが少なく、アミロペクチンの割合が高い米は、粘りが強く、冷めても硬くなりにくい傾向があります。そのため、ミルキークイーン、ゆめぴりか、つや姫などは、お弁当やおにぎり向きと言われることがあります。

もちろん、「冷めてもおいしい」は、やわらかさだけで決まるものではありません。粒立ち、香り、甘み、おかずとの相性。そうしたものを含めて、冷めたときのごはんのおいしさは決まりますが、おこめを選ぶときに品種によって味わいが変わることを意識してみるのも楽しいかもしれません。

④【裏技】もち米を少し混ぜる

品種によって冷めたときのおいしさが変わるのだとしたら、白米に対して1割ほどもち米を混ぜる方法もおすすめです。もち米は、でんぷんのほとんどがアミロペクチンです。そのため、冷めてもやわらかさが残りやすく、もちっとした食感になります。ちまきやおこわを思い浮かべるとわかりやすいのですが、もち米を使った料理は、冷めたときにもおいしさが持続します。

ただし、もち米を加えて炊飯する場合は、ベタつきやすくなることがあります。水加減は少し控えめにして、まずは白米9:もち米1くらいの割合から試してみるのが扱いやすいと思います。

⑤【保存方法の裏技】おいしさは冷蔵より冷凍!

ごはんをおいしく保存するうえで、意外と大切なのが「冷蔵庫との付き合い方」です。ごはんのでんぷん老化は、冷蔵温度帯で進みやすいことが知られています。つまり冷蔵庫で保存するとごはんが硬くなりやすいのです。そのため、食味だけで考えるなら、短時間で食べる場合は常温(夏場や高温多湿時は注意)、長く保存するなら冷凍の方が、おいしさを保ちやすい場合があります。

炊き立てと同じように冷えてもおいしさのあるごはん。ぜひ様々な方法を試して楽しんでみてください♪

この記事の著者

ひかる  

2児の母。慶應義塾大学卒業後、企業勤務を経てレシピ開発・執筆に従事。生産者取材を通じ食の背景と体験の価値を探究。現在は東京都日野市で「おこめとおだしのある時間」を主宰。育て、つくり、味わう体験を通じた学びの場づくりをしている。

コメントは受け付けていません。

プライバシーポリシー / 特定商取引法に基づく表記

Copyright © 2026 浅野 ひかる All Rights Reserved.

CLOSE