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レシピ

らっきょうを仕込む|甘酢漬けと塩漬け、季節の保存仕事

春から初夏へ移り変わるころ、店先に並び始めるらっきょう。毎年「今年はどうしようかな」と少しためらいつつ、気づけば手に取ってしまいます。(始める前は、毎年ちょっと腰が重い…。)

今年仕込んだのは、全部で4kg。はじめは1kgだけ仕込んだのですが味見をしたらおいしくて、「1年通して味わいたいな」と思い、つい追加してしまいました。半分は甘酢漬け、もう半分は塩漬けです。

毎日の生活は忙しい。だからいつもの暮らしに加えて手仕事をするとき、「時間がないな」「余裕がないな」と迷うことがたくさんあります。でもおいしそうな旬のものを思わず買ってしまって、大変だな…と思いながらも「少しだけやろう」と、芽を切り、根を切り、薄皮をむき…、手を動かし始めると、不思議と心に余白ができるから不思議です。

本来、保存食というのは、収穫したものを大切に食べつなぐための知恵だったのだと思います。でも、「つくる」と「つかう」が暮らしの中で離れていった今だからこそ、保存食を仕込むことで、季節の変化を感じることができるなと思ったりもしています。

らっきょうとは?|古くから親しまれてきた夏の保存食

らっきょうはネギ属の野菜で、独特の香りとシャキッとした食感が特徴です。日本では古くから親しまれ、甘酢漬けや塩漬け、たまり漬け、味噌漬けなど、さまざまな保存食として楽しまれてきました。

旬は5〜6月ごろ。梅仕事と並んで、「今年もこの季節がきたな」と感じさせてくれる手仕事のひとつでもあります。

中国では紀元前から利用されていたとも言われ、日本でも昔は薬として用いられていたそうです。江戸時代には漬物だけでなく煮物にも使われ、庶民の暮らしの中で親しまれてきました。また、やせた土地でもよく育つため、砂丘地でも栽培されています。沖縄で栽培される島らっきょうは小ぶりで、香りと辛みが強いのが特徴です。

らっきょうというと、「甘酸っぱいもの」というイメージが強いかもしれません。でも、その印象を少し手放してみると、塩漬けや味噌漬けなど、いろいろな味わい方が見えてきます。炒めものにするのもお酒に合う一品になります。同じらっきょうでも、漬け方によって香りや辛み、食感の出方がまったく違うのも面白いところです。

らっきょうは昔から暑気払いとしても親しまれてきた夏の保存食。これから暑くなる季節に向けて、少しずつ味が育っていくのを楽しみに待つ時間もまた、この手仕事の魅力なのだと思います。

らっきょうの下処理|手を動かしているうちに…

らっきょうは保存食のイメージが強く、「下処理が大変そう」「手間がかかりそう」と思う人も多いかもしれません。でも、すること自体はとてもシンプルです。

らっきょうの下処理の流れ

  • 泥を軽く落とす
  • 根と先端を切る
  • 薄皮をむく
  • 水で洗う
  • しっかり水気を切る

ひげ根や芽を取るときは、傷んだ部分も一緒に取り除きます。難しそうに思える保存食ですが、自分のライフスタイルに合った量にすれば、作業そのものはそこまで難しくありません。

らっきょうは、土から掘り上げられたあとも強い生命力で生長を続け、すぐ芽を出そうとします。なので購入後はすぐに仕込むのがおすすめです。(すぐに芽や根を切らず、泥だけおとし、8%ほどの塩水につけて生長をゆるやかに止める方法もあるそうです。)

保存食らっきょう

半分は甘酢漬けに|疲れた日に食べたくなる味

今回は、半分を定番の甘酢漬けにしました。疲れたときにひとつつまんだり、カレーに添えたり。刻んでタルタルソースやドレッシングに加えてもおいしく、冷蔵庫にあると、つい手が伸びる味です。毎年そこまで厳密に計量しているわけではありませんが、いつも大体このくらいを目安にしています。

甘酢の材料(らっきょう500g分)

  • 米酢 1カップ
  • 砂糖 100〜120g
  • 塩 30g
  • 赤唐辛子 適量

熱湯消毒した瓶にらっきょうを詰め、甘酢の材料を加えます。4日〜1週間ほどで食べ頃に。冷蔵保存で、1年ほど楽しめます。(煮切りみりんをつくるようになってからは、砂糖100g、煮切りみりん30mlにするようになりました)

半分は塩漬けに|時間とともに育つ保存食

もう半分は塩漬けにしました。今回は10%の塩加減で。

塩だけで漬ける方法は、甘酢漬けよりもさらに昔ながらの保存食らしさを感じます。そのまま食べるだけでなく、刻んで料理に加えたり、あとから別の味に漬け替えたり。使い方を広げやすいのも魅力です。

保存するときは、らっきょうが漬け汁から顔を出さないようにすると傷みにくくなります。漬けてしばらくすると、野菜から水分が出て水位が上がってくるので、それをふまえて調整すると良いと思います。

保存容器は、琺瑯やガラスのものがおすすめです。(今回の写真では、ちょうど琺瑯もガラスも使い切ってしまっていて、とりいそぎ金具の容器も総動員でした…。)

完璧じゃなくても、まずやってみる

らっきょうの選び方や下処理にはいろいろなポイントがあり、今はSNSやインターネットでもたくさんの情報があります。よく言われるのは(私も書きましたが笑)

  • 土付きで新鮮なものを選ぶ
  • 芽が出る前に仕込む
  • 買ったその日のうちに処理する
  • 根はぎりぎりで切る

などで、これらのことを気を付けると、食感よくおいしく仕上がると言われています。

でも。個人的には、はじまりは正直もっと気楽でもいい気がしています。薄皮をむいて、よく洗って、好きな味に漬ける。まずは、それで十分!

おいしさには、採れたての新鮮なおいしさもあれば、味つけのおいしさもあり、時間や発酵の力によって生まれるおいしさもあります。保存食は、その「時間のおいしさ」や「自然の力を借りてつくるおいしさ」を待つ営みなのかもしれないと考えています。食材、塩や酢、空気や温度。そうした自然の力が、時間の中でうまく働き合うことをイメージしながら仕込んでいると、「どう切ると傷みにくいかな」「どんな扱い方が心地いいかな」と、少しずつ理解できる気がしています。

無理なく楽しめる量で手を動かしているうちに、「もっと食感を良くするにはどうしたらいいかな」
「やっぱり素材の鮮度って大事だな」そんなふうに自然と気になり始めて、調味料や産地を見直したり、切り方を変えてみたり。どんどんやりたくなって、どんどんおいしくしたくなって、結果として自然と伝統的な方法に近づいていくものなのではないかなと思っています。

まずは完璧じゃなくても、失敗してもいいから手を動かしてみることで、そうして季節の手仕事に触れる人が少しずつ増えたらうれしいし、自分自身も、なんとか細々とでも続けていきたいなと思うのです。


この記事の著者

ひかる  

2児の母。慶應義塾大学卒業後、企業勤務を経てレシピ開発・執筆に従事。生産者取材を通じ食の背景と体験の価値を探究。現在は東京都日野市で「おこめとおだしのある時間」を主宰。育て、つくり、味わう体験を通じた学びの場づくりをしている。

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