「日野の田んぼをつなぐ会」のお話会に参加しました ~東京の田んぼ復活プロジェクトから見えた都市農業の未来~

東京都の「東京の田んぼ復活プロジェクト」※に採択された「日野の田んぼをつなぐ会」のお話会に参加しました。発足の経緯や今後の活動方針について学ぶとともに、田んぼに想いを寄せる方々とつながりをもつ貴重な時間となりました。
「日野の田んぼをつなぐ会」は、日野市で生産緑地の田んぼを維持管理する4団体(石坂ファームハウス、清水農園、TANBONOWA、せせらぎ農園)が連携して立ち上げた団体です。この度東京都の「東京の田んぼ復活プロジェクト」に採択され、今後3年間助成を受けながら、日野の豊かな自然や美しい田んぼの風景を次世代へつないでいくことを目指し、イベントや生きもの調査などを通じて、市民・農家・地域を結ぶネットワークづくりを進めるなどの活動を展開するそうです。(2026年5月25日付の日本農業新聞にも活動が紹介されました。)
今回のお話会は、一昨年開催された「農ある暮らしづくり10回連続講座」の参加者を中心とした市民説明会の第一歩として開催されたもので、当日は市内外から参加者が集まり大学生の姿も見られました。団体設立の経緯や今後の活動方針だけでなく、東京の田んぼを取り巻く現状についても分かりやすく説明され、参加者の田んぼに対する思いや期待を語り合う時間も設けられたほか、石坂ファームの田んぼや助成金で導入されたアイガモロボの見学も行われ、学びの多い時間をすごすことができました。
「田んぼと市民をつなぐ」という新しい農業のかたち
特に印象に残ったのは、「これから東京の田んぼを守っていくためには、お米を販売商品として農家と消費者がつながるだけではこと足りる時代ではない」というお話でした。
これからは、
田植えや稲刈りなどの「体験」の提供
「学び」の場づくり
生物多様性の保全機能の確認となる生きもの調査
地域コミュニティの場づくり
田んぼや米作りの「物語」の共有
…など、田んぼが持つ多面的な価値を伝えながら関係人口を増やしていき、農作業に参加したい都民と、人手を必要としている農家を結び付けていくことが重要だというお話でした。
新宿から日野市へ移り住んだ私自身、この1年間で「農ある暮らしを求める人」と「実際に農業を営む人」の両方を身近に感じるようになり、両者をつなぐ機会や仕組みの大切さや必要性を実感していたため、共感しながらお話を伺いました。
市民も農家もそれぞれに田んぼを大切に思っていても、制度や相続などの仕組みから日常社会のなかで両者が直接的に関わることのできる機会は限定的で、時代の変遷とともに農の位置づけも変わっています。それぞれの視点、無意識にある前提の差などを、丁寧にひもとき、つなぎ合わせていくことが大切になるのではないかと感じました。
市民・行政・農家、それぞれの立場から考えてみたこと
今回のお話会に参加して、「私にできることは何だろう」と考えました。一市民の立場として感じたことは、農に関わる入り口のハードルをとことん下げることの大切さでした。食や農に関心のある一部の人だけでなく、子どもから高齢者まで、誰もが「なんだか楽しそう」と自然に感じられるように参加のハードルを下げる、まずは一人でも多くの市民に何らかの形で関わる機会を届けることの大切さです。
農作業には、実際にその場に行き、手を動かしてみることでしか得られない学びや感覚があると感じています。たとえ数分でも、少し面倒に感じても、スピードの速い現代の忙しい毎日の中で足を止め、スピードダウンする時間を設け、農のある時間の流れを感じることには、言葉だけでは伝えきれない魅力があると思うのです。また、共に手を動かす時間からは、世代や立場や普段の生活スタイルの違いをこえたつながりが生まれると思います。
そうした小さな体験は、現代社会が抱えるさまざまな課題を見つめ直すきっかけになるはず。小さな一歩や小さな関わりが、持続的な活動を支える想いへと育っていくように思うので、気軽に参加できる入口をつくり、「自分にもできそう」と思える多様な小さな一歩を生み出し、化学反応を起こしていくことが重要だと考えました。
一方で、行政からの視点を想像すると、3年間の助成終了後も継続できる仕組みづくりは必要不可欠です。持続可能なモデルとしてどのような形があり得るのか、評価は何を基準とするのか。そのために自分は何ができるのか。これは私自身がエディブルエデュケーションの実践を考える中で、常に向き合っているテーマでもあり、改めてその大切さを実感しました。農やコミュニティ形成の成果は数字で測ることが難しいようにも感じますが、言語化、数値化することが難しい魅力こそ、これからの未来に必要不可欠であり、そこに予算や人的リソースを組み込むための伝える力を紡いでいくことが大切だと感じています。
最後に、今回会を立ち上げた農の現場にいる皆様の状況を想像すると、本業である農業を続けながらイベントや会としての活動を展開することは、想像以上に大変なことだろうと思いました。農繁期は同時にイベントに向いている時期でもあり、本当の意味で農家の力になるまでの過渡期を支えるための、農家以外の存在や仕組みが必要だと強く感じました。そこで主起こされたのは南平交流農園で学んでいるコミュニティの力です。それぞれが強みを持ち寄り、支え合えう力と仕組みこそ、これからの都市農業には必要なのだと改めて感じ、今回の会の発足の意味を改めて感じました。
FARMERS FIRSTの視点から考える、私にできること
低い収益性、農業者の高齢化、農業機械の老朽化、用水路の維持管理…など、東京の田んぼ、都市の農には特有の課題があることを学びました。それらと向き合いながら営農を続ける農家を、市民としてどう支えられるのか…と考えたときに、エディブル・エデュケーションで何度も耳にしてきた「FARMERS FIRST」という言葉がよぎりました。つくりてが大切、自分自身のこれまでの学びと今回の学びをつなげながら、自分の一歩を見出していきたいと思いました。
また、資料を読み進める中で、「冬季湛水」という言葉があったことにも心が動きました。五十嵐先生のもとで学んできた冬季湛水不耕起移植栽培の学びが、このプロジェクトと少しつながったように感じ、とてもうれしく思いました。日野市での実践を学ぶこともとても楽しみです。
学び深い時間であったと同時に、自分がまだまだ知らないことの多さも実感しました。だからこそ、これからも現場に足を運び、自分の手を動かしながら学び続けたいと思います。
「日野の田んぼをつなぐ会」を支えるために、一市民としてできることを探し続けると同時に、自分の実践としても、改めて米と大豆の魅力を伝えるワークショップの実践や、ブログを通したレシピや食と農に関する情報の発信をしっかり続けていきたいと背筋が伸びる思いでした。
大きなことはできなくても、自分にできることを一つずつ積み重ねる。その積み重ねが、人と人、人と自然、そして地域の未来をつなぐ力になると信じています。貴重な学びの機会に感謝します。

