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「ハチドリのひとしずく―いま、私にできること」を何度も読み返す理由

ハチドリのひとしずく

『ハチドリのひとしずく』はどんな本?

何度も読み返している本があります。『ハチドリのひとしずく―いま、私にできること』(監修:辻信一/光文社)です。

本の冒頭では、南アメリカの先住民に伝わる「ハチドリのひとしずく」という物語が紹介されています。森が燃え、動物たちが逃げ惑うなか、一羽のハチドリだけが水をひとしずくずつ運び続けます。「そんなことをしていったい何になるんだ」と笑われても、ハチドリは言います。

「私は、私にできることをしているだけ。」

マイケル・ニコル・ヤグラナスによる力強く美しい絵と、少ない言葉で紡がれる物語は、読み終えたあと、心だけでなく世界の見え方まで少し変えてくれるような作品です。

物語だけでなく、世界中で「自分にできること」を積み重ねている人々の実践や、私たちが地球のためにできる小さな行動も紹介されています。環境問題や持続可能な暮らしについて考えたい人にもおすすめしたい一冊です。

辻信一さんを知ったきっかけと、この本に惹かれた理由

私が辻信一さんを知ったのは、「ナマケモノ倶楽部」の設立者としてでした。

以前、新宿区で『食べることは生きること ~アリス・ウォータースのおいしい革命~』の上映会を主宰した際、参加者の中にナマケモノ倶楽部の方が何人かいらっしゃいました。どの方も環境問題や社会課題について、とても前向きに、生き生きと語る姿が印象的で、「こんなふうに社会と関わる人たちがいるんだ」と心を動かされたことを覚えています。

私自身は会社員時代、加工食品流通部門に所属していました。でももっと人の顔が見える場所で、毎日の食事を支える現場とかかわりたいという思いが強くなり、フードコーディネーター養成学校へ進みました。卒業後はレシピ開発に携わりましたが、レシピを届けるだけでは、人が「味わうこと」や自分にとっての「おいしい」を考える機会までは生み出せないと感じるようになりました。

その後、食育教室を始めましたが、続けるうちに「食育は知識を学ぶこと以上に体験することが大切なのではないか」と考えるようになりました。料理や食卓だけでなく、土から食べものという命が生まれる場所を肌で感じること。その体験こそが、食育の原点なのではないかと思うようになったのです。

そうして自分の関心をたどっていくと、不思議と何度も辻さんの活動に出会い、シューマッハ・カレッジにも興味を持つようになりました。気づけば、辻さんはいつも心のどこかにいる存在の一人になっていました。

「今、私にできること」を思い出させてくれる一冊

世界には大きな問題がたくさんあります。何かしたいと思いながらも、「自分にできることなんて、本当にあるのだろうか。」と感じることは少なくないのではないでしょうか。「今、自分にできることを積み重ねよう」と自分に言い聞かせても、「これで本当にいいのだろうか」と迷う気持ちが消えるわけではありません。

そんなときに私はこの本を何度も読み返しています。長年にわたり環境や社会について発信し続けてきた辻信一さんだからこそ届けられる言葉や情報が、読みやすくコンパクトにまとめられています。決して厚い本ではないので、最後まで読むのにそれほど時間はかかりません。物語だけを味わうのもよし、自分の一歩を考えるために読み返すのもよし、紹介されている世界中の誰かの「ひとしずく」に触れてみるのもよし。

私にとってこの本は、人生の節目ごとに立ち止まり、「今、自分にできること」を静かに問い直させてくれる一冊です。これからも、いつも手の届く場所に置いておきたいと思っています。

この記事の著者

ひかる  

2児の母。慶應義塾大学卒業後、企業勤務を経てレシピ開発・執筆に従事。生産者取材を通じ食の背景と体験の価値を探究。現在は東京都日野市で「おこめとおだしのある時間」を主宰。育て、つくり、味わう体験を通じた学びの場づくりをしている。

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