【郷土を訪ねるスープ手帖 #2】東京 小松菜の味噌汁-江戸が育てた小松菜の魅力

こんにちは!「郷土を訪ねるスープ手帖」と題して、日本各地に伝わる汁ものを探求しています。日本には、その土地の自然や気候、風土の中で育まれてきた郷土料理があります。その中でも汁ものは、身近な食材を無駄なく使い、季節の恵みを味わう知恵が詰まった料理です。さらには忙しい毎日を経済的にも栄養的にも助けてくれる心強い存在でもあります。
実際にその土地の汁ものを作り、味わいながら、料理だけではなく、その背景にある歴史や文化、暮らしの知恵までたどってみたいと思います。一杯の汁ものを通して、その土地の暮らしを旅するような気持ちで読んでいただけたら嬉しいです。
今回探求するのは東京都。東京と聞くと高層ビルや人の多さを思い浮かべますが、実は江戸時代から受け継がれてきた野菜があるのです。そのひとつが「小松菜」。今日は「小松菜とお揚げのおみそ汁」について書きたいと思います。ごく普通のお味噌汁のように思えますが、ひとつひとつをひもといていくと、その一杯には、江戸の歴史や東京の風土、日々の暮らしを支えてきた知恵を感じられるかもしれません。知ることでいつもの味わいがぐっと深まる、そんな記事になればうれしいです。
江戸が育てた小松菜という野菜

小松菜の歴史
小松菜は、江戸時代初期から現在の東京都江戸川区小松川周辺で栽培されてきた野菜です。諸説ありますが、八代将軍・徳川吉宗が鷹狩りの際、この地で食べた汁物に入っていた青菜を気に入り、「小松川」にちなみ小松菜と名付けたという言い伝えが残されています。今でも東京都は全国有数の小松菜の産地です。
小松菜の栄養
小松菜は緑黄色野菜のひとつ。ビタミンCとβカロテンが豊富で、カルシウムも豊富に含まれています。抗酸化作用があり、風邪の予防などにも効果が期待できる老若男女問わずとりいれたい野菜です。小松菜のビタミンCは熱に弱いため、さっとゆでるとおいしさも栄養も損ないません。
旬や選び方
旬は12~2月。ピンとして葉の色が濃く、みずみずしいものを選ぶと良いです。葉先は丸く小ぶりのもののほうがやわらかいです。全体を湿らせて袋に入れ、根を下にして保存します。
暮らしのヒント「小松菜は葉と茎に分ける、水を吸わせる」

小松菜は火を通しすぎると味が落ちてしまうので、さっと調理するくらいがおいしいという、忙しい毎日の味方。さらには茎と葉でまったく違う味わいを楽しめるので一石二鳥!シャキッと歯切れのよい茎とやわらかく香りのある葉。一株で二つのおいしさを味わえます。調理する際は、葉と茎をあらかじめわけておき、それぞれに適した調理法を選ぶとおいしく扱うことができます。また、調理する前に根元を水に浸けておくと、収穫後に失われた水分を吸い、畑で育っていた頃のように葉がいきいきとするのでおすすめです。
油揚げは、日本の台所の名脇役

小松菜と並ぶ主役が油揚げです。油揚げは、大きく膨化するよう工夫してつくられた豆腐を薄切りにして水切りし、油で揚げたもの。薄揚げ、いなり揚げなど、地域によって呼び名もさまざまです。価格は手頃で、たんぱく質が豊富。冷凍保存もでき、汁物、煮物、炒め物と幅広く活躍します。十分に加熱されているので火の通りを気にすることなく調理することもでき、暮らしには欠かせない食材だと感じています。
その便利さに加えて魅力的なのは、その奥深さです。地域によって形や大きさが違うだけでなく、スーパーでもメーカーごとに風味や食感は大きく違います。そしてもちろん地域の豆腐店で揚げたてをいただいたときのおいしさは格別ですよね。手ごろで身近で奥深い!暮らしに寄り添うすばらしい食材です。
お味噌汁に使うときは、私は熱湯を回しかけるだけではなく、沸騰したお湯で数秒しっかりと油抜きをしています。少し手間に思えますが、おいしさが違ってくるので、まとめて下処理をして冷凍しておけば、忙しい日でもすぐに使えます。
東京の暮らしを味わう一杯

小松菜と油揚げのおみそ汁をつくる際は、水を吸わせた小松菜をあらかじめ葉と茎に分けて食べやすい大きさに切りました。油揚げは、具材に合わせて切り方を変えていますが、今回はしっかりと油揚げを味わいたくて短冊切りにしました。
かつおだしを温め、小松菜の茎を先に加えます。続いて油抜きをした油揚げを入れ、最後に葉を加えてさっと火を通し、火を止めて味噌を溶きます。卵を落とせば、それだけで十分ごちそうになる一杯です。

今日の一杯が、その土地の暮らしに思いを馳せるきっかけになりますように。食材の背景を知ることで、味わいが深まりますように!
参考文献
「からだによく効く食材&食べあわせ手帖」三浦理代監修 池田書店
「飛田和緒の郷土汁」飛田和緒 世界文化社
「日本の伝統食品事典」日本伝統食品研究会編 朝倉書店
