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【郷土を訪ねるスープ手帖 #1】北海道の郷土スープ「三平汁」|素材の味を生かした、北の大地の知恵

三平汁

こんにちは!今日から「郷土を訪ねるスープ手帖」と題して、日本各地の汁ものを探求してみたいと思います。

日本には、その土地の自然や気候、風土の中で育まれてきた郷土料理があります。その中でも汁物は、身近な食材を無駄なく使い、季節の恵みを味わう知恵が詰まった料理です。

このシリーズを始めるきっかけになったのは、料理家・飛田和緒さんの著書『郷土汁』(世界文化社)でした。ページをめくるたびに、「こんなにたくさんの汁物が日本各地で受け継がれてきたのか」と驚くとともに「これは全部作ってみたい!」という気持ちが芽生えました。

そこで、この本を道しるべの一つとしながら、農林水産省「うちの郷土料理」などの資料も参考に、一つひとつ実際に作り、その土地の歴史や文化を学び、自分自身が感じたことを記録していくことにしました。

レシピを紹介するだけではなく、一杯の汁物の背景にある風土や暮らし、人々の知恵まで伝えられるシリーズにしていきたいと思っています。

記念すべき第1回は、北海道の郷土料理「三平汁」です。

三平汁とは

三平汁は、塩漬けした鮭やニシンなどの魚と、大根、にんじん、じゃがいもなどの野菜を煮込んで作る北海道を代表する郷土汁です。冷蔵技術がなかった時代、北海道では魚を塩漬けにして保存し、厳しい冬を越えるための大切な食料として活用してきました。その保存魚のうま味を生かして作られたのが三平汁です。現在では鮭だけでなく、ニシンやホッケ、タラなど地域によって使う魚もさまざまで、それぞれの家庭に受け継がれる味があります。

今回作った三平汁

今回はスーパーで買い求めた塩鮭を使い、大根、にんじん、じゃがいもを合わせて作りました。鮭は一度湯引きをして余分な脂や汚れを落とし、アクをこまめに取り除きました。仕上げに少量の生姜も散らしました。生臭さはまったく気になりならず、鮭のおいしさを味わうことができました。

アクとり

昆布だしは、普段から麦茶ポットにまとめて作り置きしているものを使用しています。いつでも使えるようにしておくと、日々の料理にも手軽に取り入れられ、とても便利です。

昆布だし

感想

鮭の汁物といえば、石狩鍋のようなみそ仕立てを思い浮かべていた私。塩味だけでは鮭の生臭さが残るのではないかと予想していましたが、実際には全く生臭さはなく、塩漬けされた魚がつくる塩味は想像をこえるおいしさでした。

具材としていれた野菜のおいしさがじんわりと染み出して、鮭のうまみとしっかり合ってる!昆布だしと、煮込んだ根菜のあまみ、鮭のうま味とほどよい油分がまじわって、これは三平汁ならではのおいしさだー!と感動しました。

昆布も鮭も野菜もおいしい北海道。三平汁は素材そのものの味を生かしたまさに「郷土料理」だなぁと実感しました。新鮮で良質な素材が手に入る北海道では、家庭料理らしくざくっと作ってもおいしく仕上がるのだろうなと雪降る北海道の暮らしで昔ながらに親しまれてきた様子を想像しました。

また、三平汁は具材の切り方によっても印象やおいしさがかなり変わる料理だなと思いました。今回は大根とにんじんを薄いいちょう切りにし、じゃがいもは火の通りが早いため少し厚めに切りましたが、鮭のアラを使い、野菜もごろっと大きめに切れば、豪快なおいしさが味わえそう。

同じ料理でも、家庭や地域によってさまざまな味わいを楽しめるのも、郷土料理の懐の深さであり、大きな魅力ではないでしょうか。

三平汁の名前の由来

「三平汁」という名前の由来には、いくつかの説があるそうです。ひとつは、松前藩の藩主が狩りの途中、漁師・斎藤三平の家で振る舞われた汁を気に入り、「三平汁」と名付けたという説です。もうひとつは、有田焼の深皿である「三平皿(さんぺいざら)」に盛り付けて食べられていたことから、その名が付いたという説です。どちらも広く知られている説ですが、現在のところ定説はありません。

現在でも北海道には三平皿に盛り付ける文化が残る地域もあり、料理だけではなく器も含めて食文化が受け継がれていることに、郷土料理の奥深さを感じました。

暮らしの中で循環をつくる

野菜くず

余談ですが、料理を作る過程で出た野菜くずは、細かく刻んでコンポストへ入れました。昆布だしの昆布は佃煮にしたり、時には刻んで汁物の具材としています。

おわりに

「どうせ石狩鍋みたいな味でしょう~」とたかをくくっていましたが、実際に手を動かしつくってみると、塩漬けした魚の塩味がつくる優しいおいしさや味わいはこの料理ならではのものでした。また、シンプルな味わいだからこそ素材の味が大切であることを体感し、北海道の食材の豊かさを実感する機会にもなりました。

全国を旅することはできなくても、さまざまな食材が手に入る現代、ぜひレシピを通じて日本全国の土地を感じてもらえたら嬉しいです。

参考文献

  • 飛田和緒『郷土汁』世界文化社
  • 農林水産省「うちの郷土料理」北海道「三平汁」

この記事の著者

ひかる  

2児の母。慶應義塾大学卒業後、企業勤務を経てレシピ開発・執筆に従事。生産者取材を通じ食の背景と体験の価値を探究。現在は東京都日野市で「おこめとおだしのある時間」を主宰。育て、つくり、味わう体験を通じた学びの場づくりをしている。

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